小型犬の生活習慣と健康寿命について。獣医師玉城の見解

犬の健康 獣医師の記事

日本では住居環境の影響から小型犬を飼う人の割合が高いと言われていますが、「できるだけ長い時間を一緒に過ごしたい」という思いから大型犬や中型犬と比較して平均寿命の長い小型犬を選ぶ人も多いのではないでしょうか。

小型犬の平均寿命は40年ほど前までは8歳にも満たなかったと言われていますが、今では14歳を超えています。動物病院で働いていると18歳や19歳の小型犬と遭遇する機会もままあり、寿命が延びてきている事を実感します。

もちろん寿命が延びていく事は大変喜ばしいのですが、同時に「健康寿命」も延ばしていかなければなりません。寿命とともに病気で苦しむ時間も一緒に延びてしまうと喜ばしい事とは言えなくなってしまいます。

そこでこの記事では、獣医師としての視点から「犬の健康寿命を延ばすにはどうすればいいのか?生活習慣の中で気をつけるべきポイントは何か?」」といった疑問に答えていきたいと思います。

※今回は小型犬を中心にお話ししますが、ほとんどが中型犬や大型犬にもそのまま当てはめる事のできる内容となっています。




犬の「健康寿命」を延ばすには

若いうちは元気いっぱいなワンちゃん達もシニア期と言われる8歳辺りから徐々に体力が落ちていき、病気になるリスクも高くなっていきます。

変化を感じながらともに歳を重ねていくことも犬を飼う醍醐味だと思いますが、できるだけ長く健康でいてほしいと願う気持ちは犬を飼う全ての人が共有しているものですよね。では犬の「健康寿命」を延ばすにはどうすれば良いのでしょうか。

ズバリ!「生活習慣病」になりにくい生活を送って貰えば良いのです!

身も蓋もない答えの様ですが、幾つかのポイントを押さえる事で確実に犬の「健康寿命」は伸びていきます。

犬の生活習慣病

「病気」は遺伝や環境など様々な要素が重なって発症に至ります。その中でも日々の生活習慣の積み重ねが発症に大きく関わる「病気」の事を「生活習慣病」と呼んでいます。

人と同様に犬も高齢化に伴って「生活習慣病」が問題になっており、代表的な疾患としては「糖尿病」、「関節疾患」、「歯周病」、「心臓疾患」などが挙げられます。これら以外にも日々の生活習慣の影響で発症リスクが高まる疾患は数多くあります。

犬にとって「生活習慣病」になりにくい生活とは?

具体的に「生活習慣病」になりにくい生活を送ってもらう為にはどのような点に気をつければよいのでしょうか。大きく分けて以下の4つのポイントがあります。

①質の良い食事を選ぶ
②適正なボディコンディションを保つ
③ストレスを減らす
④歯のコンディションを良くする

これら4つのポイントは独立しているわけではなく、それぞれが相互に関わり合うため、全てのポイントを押さえる事で生活の質は大きく向上します。

①質の良い食事を選ぶ

ドッグフード
犬にとって食事は重要で、質の良い食事を与えてあげると「生活習慣病」になりにくい体になります!

なんて事は今更言うまでもない様で、飼い主さん達の「食事」に対する意識は高まっており「食事はどうすればよいか?ドッグフードはどう選べばよいのか?」という質問をよく受けます。

最近はドッグフードの数が増えており、ネット上でも犬の「食事」に関して様々な情報が飛び交っている為やや混乱してしまっている飼い主さんも少なくない様に感じます。

まず前提として、犬種や年齢、それぞれの犬の体質や健康状態によって要求される栄養バランスは大きく変わってきます。その為、原材料や調理法も含めてそれぞれの犬に合わせた食事を見つけてあげる事が重要となります。

その前提の上で「現状でベターな食事とは何か?」という問いに答えるならば、「良いドッグフードメーカーの総合栄養食のみを与える食事」となります。

※総合栄養食とは犬にとって必要な栄養素がバランス良く含まれているフードのことです。そのフードのみで完結しているため別のフードやおやつなどを一緒に与えてしまうとバランスが崩れてしまいます。

では「ドッグフードメーカー」は何を基準に選べばいいのでしょうか。

安すぎるフードには注意!

ペットショップに行ってドッグフードの棚を見てみてください。安い価格帯のフードメーカーと高い価格帯のフードメーカーの2つに分けることできるかと思います。

ズバリ!安い価格帯のメーカーのフードは質が非常に低いです!

その様なメーカーは、犬の健康や病気の事は度外視しフードの嗜好性(犬の食べつき)を高め、価格を抑え利益を上げる事を追求しているメーカーですのでオススメする事は出来ません。『国産』、『〇〇フリー』といった様な耳障りの良い売り文句(実際は何の科学的根拠もない言葉)を並べている事も多い為注意が必要です。

良いフードは高い

良いメーカーのフードの値段が高い理由は2つあり、原材料の質が高い事と、研究費にお金をかけている事が挙げられます。良いメーカーはきちんと犬の健康や病気について研究をしており、より良いフードとなる様に日々アップデートを続けています。最近では年齢別、犬種別と細分化されたフードも増えてきており、よりフードを選びやすい環境になってきていると感じます。

高ければ良いフードなのか?

フードの値段は質の低いフードを見極める上で非常に有用な基準となりますが、フードの値段が高ければ高いほど良いフードであるという事ではありません!

最近では単に希少で珍しい原材料を使っているという事だけで値段を高く設定している(犬の健康や病気に関してはあまり研究していない)メーカーも増えてきている為、やはりできるだけ犬の栄養学やフードについて勉強をして自分なりの論理を持って選択する事が大事かと思います。

動物病院でよく見るフード

動物病院で使われているメーカーのフードを選ぶという方法もあります。病気になった犬たちのフード(療法食)を作っているメーカーである為、一般の総合栄養食の質も非常に高いです。最も無難な選択肢といえるかもしれません。

手作り食はどうか?

「手作り食はどうなのか?」という質問もよく受けますが、バランスのとれた質の高い食事を作るのはかなり難しいというのが私の考えです。

実際ネットに上げられている犬の手作り食メニューのほとんどに栄養バランスの偏りが見られるのです。

きちんと費用をかけ長期的な研究を重ねて作られたドッグフードと比べると、質が低くなってしまう場合が多いのが実状かと思われます。

※手作り食を否定しているわけではありません。犬の栄養学の知識が十分にあり、毎日手作り食の為に時間とエネルギーを確保できるのであれば挑戦してみても良いと思います。

②適正なボディコンディション

犬の健康
肥満は様々な病気の発症リスクを高めるため、確実に犬の「寿命」と「健康寿命」を縮めてしまいます。また運動性が落ちる事でストレスの原因ともなり日々の生活の質(QOL)まで著しく落としてしまいます。

犬の肥満は人が原因

いくら良い食事を与えていても、与えすぎてしまうと当然太ります。犬には必要以上に食べ過ぎてしまう(与えた分だけ食べてしまう)習性がある為、人間がきちんと食事量を管理しなければいけません。

特に小型犬の場合は食事量を少し増やしただけで肥満となってしまう事がある為注意が必要です(我々にとっては少しでも小型犬にとっては少しではない)。

また診察をしていて感じる事ですが、ワンちゃんの肥満に気づいていない飼い主さんが割と多いです。不安がある場合はかかりつけの動物病院でボディコンディションと体重を測ってもらってください。ボディコンディションが正常であればその時の体重を基準とし日々管理していきましょう。

ダイエットの注意点

すでに肥満である場合は運動量を増やすのではなく、食事量を減らす事で減量を目指してください。肥満の状態で運動量を増やしてしまうと関節や背中へ大きな負担をかける事となります。

そもそも運動量を増やすことで減量させるという発想は現実的ではありません。減量に必要な運動量を散歩の時間に変換すると、体を壊してしまうほどの長時間となってしまいます。

食事量は普段与えている量の9割、8割と徐々に減らしていきましょう。急激な減量は危険であるため半年から1年くらいかけて目標体重を目指しましょう。

最近はダイエット用の低カロリー食も豊富にあるので食べつきが良ければ試してみても良いかと思います。

③ストレスの少ない暮らし

強いストレスは犬の免疫力を下げ、長期的に強いストレスを受ける事で様々な病気が発症しやすくなる事が分かっています。

何に対してストレスを感じるのかはそれぞれの犬の性格により幅があるため、一緒に暮している人の観察力が頼りとなります。行動学のスペシャリストでなくても犬の表情や仕草からある程度のストレスサインを感じるとる事ができると言われていますが、できれば本などで勉強し観察力を高めましょう。

小型犬にも散歩は必要!

「小型犬は小さいから家の中で運動させていれば十分で、散歩は必要ない」と考えている飼い主さんが多い様に感じます。

犬は散歩中に色んな物の匂いを嗅ぎ、たくさんの動く物を見る事で様々な刺激を受けています。このような外での刺激は犬にとって大きな喜びとなりストレスの発散につながる為、小型犬であっても毎日の散歩は必須となります。

④デンタルケア

デンタルケア
最近はペットショップなどでもワンちゃん用の歯ブラシや歯垢を落とすためのガムといったデンタルアイテムが充実してきており、飼い主さんたちの歯に対する意識の高まりを感じます。

歯肉炎、歯周病

そもそも歯垢とは歯に残ったフードに口腔細菌が繁殖し歯周に付着したものを指します。さらに歯垢が唾液のミネラル分と混じる事で歯石となります。歯石になると歯ブラシでも落とす事が出来なくなり歯肉炎、歯周病の原因となります。

歯肉炎、歯周病とは「歯の周囲にバイ菌の巣と炎症が常にある状態」であり、放っておくとバイ菌の巣がどんどん大きくなり、歯の周囲の炎症はどんどん広がっていきます。

特に小型犬は口の大きさに比べて歯のサイズが大きく歯と歯の間のスペースが狭い事で歯垢が付きやすく歯肉炎、歯周病も重症化しやすいです。歯ブラシをしていない小型犬は早ければ1−2歳で歯肉炎、歯周病になってしまいます。

歯肉炎、歯周病が重症化すると、歯は抜け落ち顎の骨は脆くなります。当然痛みは強く食欲も落ちていきます。

炎症が鼻に波及すると常に鼻炎の様な状態となり、鼻腔や目の下の領域に膿が溜まってしまうケースも少なくありません。ここまでの状態となると生活の質(QOL)は著しく下がり、とても健康とは言えなくなってしまいます。

また悪い影響は口腔内に留まらず、心臓や腎臓、肺にみられる内臓疾患との関連も報告されています。

歯ブラシ

歯垢が歯石に変わるには2−3日かかるため、毎日しっかりと歯ブラシをしてあげる事ができれば歯垢の沈着を防ぎ歯石への変化を防ぐ事ができます。

歯ブラシのやり方、コツについては本を読んだり、動画を見たり、かかりつけの動物病院で聞いてみたり、いろんなやり方を試してみてください。お家の子に合ったより良いやり方を見つけることができると思います。

スケーリング

犬が歯ブラシを極端に嫌がる場合や、歯ブラシを継続していく事がなかなか難しいといった問題があると思います。

その場合には、定期的な歯科検診とスケーリング(麻酔下での歯垢、歯石とり)が必要となります。全身麻酔が必要となるため抵抗感が強い方もいるかもしれませんが、歯ブラシを十分にしていない犬の口腔環境は非常に悪い状態にあり、歯肉炎や歯周病は犬の生活の質を著しく下げる疾患である事を理解してください。

十分に歯ブラシを行えている自覚があるワンちゃんでも8−10歳くらいで1度スケーリングを行うことをオススメします。やはりどうしても歯垢、歯石は溜まってしまい、特に口の奥の方で歯肉炎、歯周病となっているケースが多いです。

実際僕が飼っているパピヨンも8歳と12歳の年齢でスケーリングを行いましたが、12歳の時には歯を3本抜かなければなりませんでした。

最後に

さて今回は犬の「生活習慣病」について4つのポイントに絞りお話してきましたが如何だったでしょうか。これらの事を生涯にわたって注意していく事はなかなか難しいと感じるかもしれません。

しかし、お家のワンちゃんの「健康寿命」が数年伸びる可能性があると聞けばどうでしょうか。ワンちゃんにとっての1年は人間の寿命に置き換えてみると5年から10年に相当します。ぜひ犬と過ごす時間をより良いものとしていきましょう!

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この記事を執筆したライターさん

玉城勝盛  獣医師

宮崎大学卒

神奈川県内の動物病院勤務

イラストや漫画も得意
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